ニュースレター Vol.128
世界の医療事情
世界の医療事情Vol.19~少子化の現状と対策~
日本の2022年の出生数が、国の推計よりも11年早く、80万人を割っていたことが明らかになりました。
少子化が進むと労働人口が減少するため、年金などの社会保障制度や経済成長にも影響が出ることは明白です。
医療への直接的な影響は、「健康保険料の負担増加」や「医療従事者の不足・人材育成の困難」、「地方の衰退」、これらによる「健康格差の拡大」が懸念されます。
他の国を参考にしながら、社会保障制度の見直しや育児・介護支援策、医療・介護人材の育成、移民・難民受け入れの議論など社会全体で考える必要に迫られています。
2021年の出生率が「0.81」と世界でも最低水準の韓国。
徴兵制度と就職難の影響で、大卒の新入社員の平均年齢が31歳と高いのが特徴です。また、結婚の際は男性が住宅を購入するケースが多く、不動産の高騰も未婚や晩婚の要因とみられています。
結婚後も、教育にかかる経済的負担などから産み控えが進行。しかし男性の育休ボーナス制度が導入され、男性の育休取得者が2021年には26.3%まで上昇。
2022年からは育休中の父母に賃金の100%を3ヶ月間支給する制度も始まり、3人目からの大学費用も全額支援されます。これらの政策には日本円にして約8.7兆円(2025年時点)かかると予想されていますが、出生率上昇にはまだ結びついていません。
GDPの4.7%を少子化対策に当て、移民に頼らず10年かけて少子化を食い止めたハンガリー。
2011年に1.23だった出生率を2021年には1.59に押し上げました。2017年から体外受精費用が全額補助され(回数制限あり)、国営の不妊治療機関も12ヶ所に増加。
医療関連以外にも、結婚奨励金制度や約3万ユーロを無利子で借入でき、3人目が生まれれば全額返済不要に。
大学学費のための学生ローンを借りていた女性が妊娠すると返済停止や免除、3年間の有給育児休暇、4人目出産で定年まで所得税免除、両親の代わりに孫を世話する祖父母には出産前の給与の70%に当たる育児手当など、まさに異次元の対策が世界の関心を集めています。
急激な人口増加と食料難を懸念し、「一人っ子政策」を進めてきた中国。
人工中絶の強要や男女比の不均衡が長年問題視されてきました。2016年以降、出生率が急激に低下し、2022年には約60年ぶりに人口が減少。
労働力不足に対応するため2016年に2人目の出産を解禁し、2020年には出生率1.34と日本と同水準に。2021年には3人目の出産が解禁し、「人口・計画出産法」に合わせて各地で少子化対策が本格化しています。
産休や育休、出産介護休暇制度が手厚くなり、出産費軽減のため医療保険と出産保険の加入が推進され、育児補助制度も実施。2023年には体外受精などの生殖補助医療や無痛分娩も保険適応となり、動向が注目されます。