ニュースレター Vol.127

世界の医療事情

世界の医療事情Vol.18~パンデミック後の飼育放棄の状況~

ロックダウン以降、癒しを求めて犬や猫を飼う人が世界的に増えました。しかし安易な気持ちで飼い始めた人も多く「思ったより世話が大変だった」、「経済的に困窮して飼えなくなった」などの理由で飼育を放棄するケースも海外を中心に増えています。動物愛護が進んでいる国では、犬や猫を衝動的に飼わないように、生体を販売するペットショップが廃止され、動物保護団体から引き取ることがスタンダードになりつつあります。日本でも新規のペット飼育頭数は増えていますが、殺処分数は減っており、動物愛護の対策が効果を上げているようです。

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中国

所得水準の上昇につれてペットを飼う人が激増している中国。
都心部ではネコや小型犬が人気で、犬猫合わせて1億匹以上が飼われています。2022年12月現在、ゼロコロナ政策は緩和されましたが、これまでは突如行われるロックダウンで飼い主が隔離され家に残されたペットが殺処分されるケースが続出。2022年4月には上海で、防疫担当者が感染者のペットのコーギーを撲殺した事件が起き、動物虐待を取り締まる法律がないことから、各地で多くのペットが犠牲になっていると報じられました。2022年4月には深セン市で国内初となる300匹ものペットを預かる臨時施設ができ、コロナで隔離された人のペットを無料でケアするサービスを始めています。

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コロナ下で5人に1人が犬や猫などのペットを飼い始めたペット大国のアメリカ。ペットの医療費が高いため、ペット用保険に入るのが当たり前になっていますが、急激なインフレのためペットの医療費を支払えない人やペットフードを安価なものに変えた人も多いようです。また、国内で最もペットショップが集中しているニューヨークでは、コストカットのために劣悪な環境で繁殖させる悪質なブリーダー「パピーミル(子犬の工場)」が大半であることが問題になり、2022年6月、ニューヨーク州では犬・猫・ウサギの販売を禁止する「パピーミル パイプライン法案」が可決されました。今後はペットショップではなく、動物保護団体から引き取ることが推奨されます。

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イギリスではパンデミックのなか、癒しを求めてペットの需要が急増。2021年には海外から多くの子犬や子猫が輸入されるなど、ペット関連の支出が日本円にして約1兆5000億円と過去最高を記録しました。しかし2022年に入り、電気・ガス代、食料品などの物価高が進み、「食料か暖房か」を迫られるようになりました。インフレ率が10%を超えると、ペットの医療費やエサ代が払えなくなり飼育放棄が続出。王立動物虐待防止協会によると2022年7月までに飼育放棄されたペットは前年の同じ時期に比べ24%増加しました。その一方で、自分よりペットの食事を優先する飼い主もおり、ペットフードを無償配布するペット用フードバンクも登場しています。

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フランスではロックダウン中は「犬の散歩」が外出理由として公的に許されていたこともあり、安易に犬を飼い始めた人が続出。自由に出歩けるようになると、飼育放棄が相次ぎました。ロックダウンで猫の去勢手術ができなかったため子猫の数も多く、動物愛護団体に引き渡されたペットの数は過去最多に。また、夏のバカンス前にペットが捨てられてしまうことが多く、社会問題となっています。そもそも衝動的な購入が飼育放棄の増加につながるとし、フランスの上院議会は、2021年11月に動物の扱いに関する法律の改正案を可決しました。そのため2024年からはペットショップで犬や猫の展示や販売、インターネットでの販売も禁止となる予定です。