ニュースレター Vol.126

世界の医療事情

世界の医療事情Vol.17~エンデミックに向けて、各国の出口戦略~

9月20日現在、日本ではすでに「第七波」がピークを越えたとされています。9月14日には世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長が「終焉は視野に入った」と し、「パンデミック」を終わらせるため、各国に新型コロナ対策の継続を求めました。諸外国では、世界的流行にあたる「パンデミック」から、一定の地域・周期で発生し続ける「エンデミック」に向けての対応へと切り替わりつつあります。日本でもエンデミック化を受け入れるか、高齢者などハイリスク者への影響を考え、時間をかけて規制を緩和するかの分岐点に立っているといえそうです。

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コロナによる死者数が5月の時点で100万人を越し、世界一位のアメリカ。8月11日には、濃厚接触者も「高性能マスクの着用推奨」のみになりました。9月18日にはバイデン大統領が「パンデミックは終った」と宣言したことから、ワクチンメーカーの株価が急落。とはいえ、今もなお1日平均400人以上の死者が出ているため、保険当局では冬に向けてオミクロン株対応のブースター接種を推奨しています。また、息切れ・疲労感・うつ症状 などの後遺症に苦しむ人も約1600万人おり、うち400万人は 仕事ができない状況と8月末にはシンクタンクが発表。コロナ下を機に65歳以上で働いていた人たちの退職も増加しており、労働者不足が社会問題となっています。

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世界に先駆けて、今年2月に規制や全数把握が撤廃されたイギリス。3回のロックダウンで経済への打撃が大きく、国内での DV件数も増えたことから、経済を優先させた形となりました。 イギリスの人口は日本の約半分程度ですが、コロナで約18万人 が亡くなり、大きな痛みを伴ったといえます。現在では約7割の人が「ワクチンによる免疫」と「感染による免疫」を併せ持つ、より強固な「ハイブリッド免疫」を獲得したとされており、撤廃後の5ヶ 月間で入院患者数は約3万人増えましたが、死者数は減っています。9月に行われたエリザベス女王の国葬でも、参列者のほとんどがマスクをしておらず、日常を取り戻している様子が世界に報じられました。

中国

顔認証機能付きの監視カメラが全土に設置されており、陽性が発覚すると住宅近辺が一晩で封鎖されるなど、今もなお厳格な ロックダウンを実施している中国。10月の党大会を前に「ゼロコロナ政策」はむしろ強固になっています。9月現在は約3億人がロックダウンの影響を受け、食料品の買占め騒ぎや精神的に不安定な若者が増えるなど混乱が勃発。経済政策は優先順位が 低く、9月19日には外国人旅行者の入国制限を緩和する規則案 が発表されましたが、海外企業が撤退する動きも激しくなっています。中国製ワクチンの効果が不明である以上、行動制限の撤廃は難しく、集団免疫も獲得できていないので、エンデミックにはまだほど遠いのが実情です。

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スウェーデンでは当初から、若者の精神保健や家庭内の虐待・ DVのリスクなどが考慮され、「社会機能の維持」が重視されてきました。感染対策の多くは国民の自律性にゆだねられ、重症化リスクの高い人を隔離した以外は、公共交通機関におけるマスク着用が推奨される程度で、強制力を伴った規制は実施されませ んでした。重症者数が増えていないことと、人口の7割がワクチン接種を完了したことから、2月には規制をほぼ撤廃。「パンデミックは終っていないが、新しいフェーズに入った」としています。コロナ下で犬を飼う人が増えましたが、家に6時間以上置き去りにするのが禁じられているので、犬の保育園の需要が高まっているとのことです。