ニュースレター Vol.120
世界の医療事情
世界の医療事情Vol.11~ワクチン接種の状況~
2020年12月のイギリスを皮切りに、世界各国で新型コロナワクチンの接種 がスタート。3月16日現在、世界中ですでに2億人以上が接種しています。その一方で、世界の「ワクチン格差」が浮き彫りとなっており、新興国や途上 国にもワクチンを公平に行き渡らせることが、パンデミックを早く終わらせ るための新たな課題となっています。また、変異株も発見されているので、ワ クチンだけに頼るのではなく、引き続きマスク着用や手洗い・消毒・ディスタンシングなどの「ワクチン・プラス」の重要性が指摘されています。
出典:ワクチンの接種回数は各国政府の公式発表などを元に集計(日本のデータは厚生労働省の統計)。各国人口は国連や各国統計。
アメリカでは、接種が一回で済み、冷蔵庫で保存できるワクチンの緊急使用許可が降りたことから、低所得地域や農村部の診療所でも接種のペースが早まり、3月15日現在、国民の約9%が接種を完全に終えています。
また、大手薬局チェーンがWebや電話で予約を受け付け、薬剤師が接種するなど、地域でのワクチン普及に重要な役割を果たし始めています。
その一方で、医療従事者や介護施設の職員、消防士の多くが、副作用への懸念と政府への信頼欠如から接種拒否をしていることが課題となっています。夏までに集団免疫確立の可能性が出てきましたが、旅行の規制は当面続くようです。
世界に先駆けてワクチン接種を積極的に進めてきたイギリス。リスク別に9つのグループを設定し、介護施設の入所者・ スタッフを第一優先で接種しています。膨大な数の接種を遂 行するため、非医療従事者も訓練を受けることでスムーズな 接種を実現。
「多くの人にワクチンを行き渡らせるため一回目の接種を優先し、2回目は12週間後までに行う」という方針が 国内外で議論を呼んでいますが、接種した高齢者の入院率や死亡率が大きく減少し、他者へ感染させるリスクも減少できることがわかってきました。また、変異株に有効なワクチンも、秋をめざして開発が進められているそうです。
3月16日時点ですでに500万人が1回目の接種を終えた、「ワ クチン先進国」のチリ。諸外国と自由貿易協定を結んでいる チリは、単一のメーカーに依存せず、アメリカやEU、中国などさまざまな経済圏からワクチンを確保。
パラグアイとエク アドルにも、ワクチンを無償で提供しました。チリでは基礎 的な診療ネットワークが全土的に整備されており、計画的な 予防接種に慣れていることから、6月中には人口の8割に接 種される見込みです。
しかし新規感染者は依然として多く、累計感染者数は90万人を突破。ワクチン接種が人々の気の緩みに拍車をかけていないか注目されています。
イスラエルは、3月11日時点で人口の約55%が一回目の接 種を済ませ、世界最速ペースで接種が進んでいます。国民皆 保険制度への加入が義務づけられており、病院のほかにドラ イブスルーやスポーツ施設でも接種を実施。
ワクチン完了後 には「グリーン・パスポート」が発行され、ジムやプール、ホテ ル、レストラン、カフェの利用もできるようになります。イスラエルは国土に対して人口が比較的少なく、アメリカの大手 製薬会社にデータを渡す代わりにワクチンを提供してもら うなど条件は整っていますが、宗教的・政治的に接種反対派 も多く、集団免疫を阻む国民の分断が懸念されます。