ニュースレター Vol.117
世界の医療事情
世界の医療事情Vol.8~コロナ禍における医療機関の状況~
~コロナ禍における医療機関の状況~
6月28日現在、新型コロナウイルスによる感染者数は世界で1000万人を超え、死者数も50万人を超えました。感染者数は各国の検査方針によって大きく異なるため、実際の感染者はより多いとみられています。今回はコロナ禍における医療機関の状況や対策をお伝えしますが、やはり国ごとの歴史や文化、国民性、政治的背景などによって方針は大きく異なります。
他国の状況を知ることで、日本の「医療のあり方」についても改めて考えるきっかけになれば幸いです。
ニューヨークで感染爆発が起こった3月下旬、病院ではひと つの人工呼吸器を二人の患者で使ったり、麻酔器を代用し て急場をしのぎ、野外病院や病院船を配置して病床を確保。 医学生や歯科医師、外国の医師免許所有者までも支援体制 に組み込まれました。一方地方では、医療保険に加入して いない人が多く、入院費が支払われないことから閉鎖する 病院も出てきており、今後ワクチンが開発されても接種で きない「経済格差」の問題が指摘されています。また中西部 などは銃社会のなごりで顔を覆い隠す「マスク」着用に抵抗 感が強く、銃で撃たれるなどのトラブルが多発しています。
ドイツは小規模の病院が多く、公立病院が約8割を占めるの が特徴です。国からの指揮命令系統が明確なため、コロナ 指定のクリニックが各地にすみやかに配置されました。ド イツではナチス政権時代の歴史的背景から「命の選別」がタ ブー視されており、集中治療用の病床はヨーロッパでは最 多。さらに今回のコロナ対応で、緊急ではない手術を延期し たり、人工呼吸器が使えるベッドを空けて受け入れ態勢を整 えると政府から財政支援が受けられることもあり、イタリア やフランス東部の患者も受け入れられました。「接触通知アプ リ」もすでに1000万以上ダウンロードされています。
今回スウェーデンでは「集団免疫」の獲得をめざし、厳格な 都市封鎖は行なわれませんでした。現時点では集団免疫の獲 得にはほど遠く、独自路線を貫いているため近隣諸国から の批判も高まっています。スウェーデンといえば福祉国家の イメージがありますが、「高齢者は積極的に治療せず、自然 な死を迎える」という死生観が浸透しており、医療資源も少 なめです。そのため70代や80代で持病があると、重症化し てもICUでの治療は受けられません。今回は高齢者施設で集 団感染が起こり、多くの高齢者が十分な治療を受けられず死 亡したことから、非難の声が上がっています。
韓国では「MERS」での苦い経験から、ドライブスルーやウォー キングスルー方式で60万件以上もの PCR検査が行われまし た。この大量の検査を支えたのは、兵役の代わりに僻地で医 療活動をしている「公衆保健医」らです。感染者が無症状や軽 症の場合は「生活治療センター」に隔離し、問診や体温、血圧 などはリモートで管理し、食事の配膳や防疫は公務員や軍人 が担当。症状が悪化した場合のみ、医療従事者が防護服で個 室を訪ねます。また韓国ではスパイ対策の一環として国民一 人一人に「住民登録番号」が与えられており、マスクの販売制 限や感染経路の追跡にも活用されています。