ニュースレター Vol.114
世界の医療事情
世界の医療事情Vol.5~医療ツーリズムで先行するアジア諸外国~
「医療ツーリズム」とは、治療や検診を受けるために外国に渡航することで す。自国にはない高度な医療サービスをリーズナブルな治療費で受けられることが多く、世界中で注目を集めています。
日本でも観光を含んだ医療ツーリズムが2020年には5,500億円の市場規模に成長するとみられていますが、先行しているアジアの国々の様子を今回はお伝えします。
政府が「医療ハブ構想」を掲げ、ビザ発行も簡素化しているタイでは、医療ツーリズムの市場規模が群を抜いています。
レーシック手術や減量手術、性別適合手術などの自費診療 も安価に受けられ、国を挙げてスパや古式マッサージ、ハーブ製品を推進して独自性を生み出しています。
また外国人向けに、日本語・中国語・アラビア語など20か国語以上に対応できる病院や、海外からの問い合わせメールに対応する専任スタッフを数多く配置している病院もみられます。
日本同様に、医療技術も機器管理もすぐれた水準を誇るシンガポール。多民族国家で多彩な言語・文化・慣習が根付いているため、国外の富裕層から人気を集めています。
富裕層をターゲットとした私立病院は非常に豪華で、カフェテリ アやレストラン、ショッピングセンターが併設され、付き添い人も快適に滞在できるのが特長。
私立病院では、メディカルセンターと呼ばれる棟に各医師が診療所を構えるスタイルの「オープンシステム」が採用されています。
毎年3万 5千人もの医学生が卒業するインドは、世界有数の 医師数を誇り、診療の待ち時間が少ないのが特長です。
治 療費も安いため、アフリカなどの発展途上国から年間約50 万人が治療に訪れます。都市部には先進機器がそろった病 院や心臓手術で世界的に知られる近代的な病院がある一方 で、アーユルヴェーダやヨガなどの代替医療も盛ん。
空港や ホテルなどインフラの未整備とスラム街の不衛生なイメージが発展のネックになっていると指摘されています。
マレーシアはイスラム圏のため、中東やインドネシアから数 多くのイスラム教徒の患者が足を運んでいます。シンガポールのおよそ半額、アメリカの25%の費用で治療が受けられ る半面、複雑な外科手術などはシンガポールやインドなど 周辺諸国に比べて遅れているといわれています。
また賃金水準が低いために優秀な医師の多くはシンガポールで勤務 しており、とくに脳神経外科や精神科、作業療法士のスタッフが不足していることが問題となっています。