ニュースレター Vol.123
世界の医療事情
世界の医療事情Vol.14~子どものワクチン接種の状況~
子どもは新型コロナウイルスに感染しても重症化しにくいとされていますが、 その明確な理由はいまだ判明していません。感染力の強い変異株の出現により子どもの感染者も増加しており、低年齢へのワクチン接種に踏み切る国が増えています。2021年12月上旬現在、日本での接種対象は12歳以上ですが、厚生労働省では早ければ2022年2月頃から5歳から11歳への接種を始める可能性を示唆しています。欧米では政策も含めた社会的な議論に発展している「子どもへのワクチン接種」について、他国の実施状況についてご紹介します。
米・疾病対策センターの統計では、新型コロナウイルス感染 による0歳~19歳の死者は計932人(2020年1月1日~ 2021年12月8日)。他国に比べて多いのは、ステイホームで 「肥満児」の増加が要因との説もあります。11月の時点で680万人以上の子どもが感染しており、11月3日から5~11歳へのワクチン接種が開始。ワクチンにはファイザー製が使われ、開始1週間で5~11歳の90万人以上が1回目の接種を終えています。ニューヨーク市では12月14日から、5歳以上の子どもにも飲食店や映画館では接種証明の提示が義務づけられる予定です。
日本の3倍の医師数を誇る「医療先進国」であり、外貨獲得のため医師の海外派遣が盛んなキューバ。予防医療に力を入れており、2020年は感染を抑え込めていましたが、2021年4月 からデルタ株が広がり、子どもの感染者数も増加。そのため9 月から、ワクチンの接種対象を2歳以上に広げました。社会主 義なので国家戦略としてワクチン開発がなされており、「アブダラ」「ソベラナ」などの国産ワクチンが使われています。 10月末には2~18歳の200万人以上が2回目の接種を完了。 学校は閉鎖されて自宅でテレビ学習となっていましたが、11 月からようやく再開されました。
2022年に北京冬季五輪を控えた中国では、2021年7月下旬に 12~17歳のワクチン接種が始まり、10月25日からは3~11 歳のワクチン接種が義務化されました。最も広く使用されて いるワクチンは、中国医薬集団(シノファーム)と科興控股生 物科学(シノバック・バイオテック)製のワクチンで、政策に基 づいて無料で接種が実施されます。 衛生当局によると、11月の半ばには中国の3~11歳のおよそ 半分にあたる8400万人が接種を完了。年末までには接種を完 了すると発表されています。なお、子どもへのワクチン接種の安全性と予防効果は、18歳以上と差がほぼないとのことです。
2021年11月22日にはオーストリアでロックダウンが始まるなど、制限措置が実施されつつあるEU諸国。ドイツやオランダでは新規感染の大部分が子どもであることから、11月 25日、欧州医薬品庁はファイザー製ワクチンの対象を5~11歳に広げることを承認しました。欧州委員会が最終決定 すれば、5~11歳へのワクチン接種が始まる見込みで、モデ ルナ製ワクチンについても診査が進められています。欧州疾 病予防管理センターは12月2日、数カ月後にはオミクロン株 がEU域内のコロナ感染の半分を超える見通しと発表。接種への取り組みを加速させています。