ニュースレター Vol.122
世界の医療事情
世界の医療事情Vol.13~ワクチン追加接種(ブースター接種)の実施状況~
ワクチンによる免疫をさらに高めるために「追加接種」することは、"押し上げる"を意味するboostから「ブースター接種」ともいわれています。日本では2021年9月21日現在、新型コロナウイルスワクチンの追加接種を医療従事者や高齢者を優先して始める方針が立てられていますが、未接種者への優先的な接種や安全性の検証、接種会場や人員確保の負担などの問題があり、ブレイ クスルー感染も報告されていることから、慎重な意見も少なくありません。WHOでは世界におけるワクチンの供給格差を鑑み、先進国に対して、年内は追加接種をせず発展途上国に分配するよう協力を求めています。
アメリカでは、9月24日から追加接種が始まりました。今回 緊急使用が承認されたのは、ファイザー製のワクチンを接種して半年以上が経過した65歳以上、持病がある人、医療従事者、教師など感染リスクの高い18歳以上が対象で、全人口のおよそ2割にあたります。この発表前日に開かれた専門家委員 会では、追加接種の効果に関するデータ不足により「医療従事者」や「教師」は対象から外れていたにも関わらず、CDC (疾病予防管理センター)が対象に決定したことは極めて異例であり、注目すべき点といえるでしょう。現在、モデルナ製ワクチンについても、追加接種の承認が検討されています。
イギリスでは多くの人に1回目の接種を行き渡らせるため、2回目の接種との間隔が「最大12週間」でしたが、現在ではデルタ株対策として「8週間」に短縮。追加接種は高齢者施設の入居者や医療従事者、50歳以上などを対象に、9月中ごろからスタートしています。
国内での研究により、同じメーカーのワクチンを3回打つよりも違うメーカーのワクチンを打つ方が免疫反応を向上させるとし、たとえばアストラゼネカ製ワクチンを2回接種した場合でも、追加接種にはファイザー製ワ クチンを使用するなど「混合接種」を認めています。なお、モデルナ製が使用される場合は半量となっています。
- 他国に先駆けてワクチン接種を進めてきたイスラエル。「デルタ株」の感染拡大を受けて、8月から60歳以上を対象に3回目の接種をスタートさせました。保健維持機構マカビによる初期の調査結果では、60歳以上が追加接種によって発症を予防できる効果は86%と推定され、重症化を防止する効果もあると報じられています。イスラエルではワクチン接種ができない未 成年の人口が多いことから、対象年齢を12歳以上に拡大し、8月29日の時点で約190万人が3回目の追加接種を完了。定期的な追加接種が定着しつつあり、現在は4回目接種に備えてワクチンの確保が進められています。
ワクチン2回接種率が80%を超えており、新型コロナウイルス感染による重症者数を低く抑えてきたシンガポール。9月 15日から60歳以上や介護施設の入居者への追加接種が始まりましたが、今後は対象を50代にも広げる方針です。8月に行動規制を緩和して以降、中秋節などの影響もあり感染が 急拡大しているため、行動制限を再び強化しています。シンガポールは罰金や罰則が厳しいことで知られますが、繁華街で感染対策やマナーを守らない人を監視する「見回りロボット」の試験運用も始まり、違反があれば司令センターに画像を送って注意するなど取り締まりを一層強化しています。