ニュースレター Vol.121

世界の医療事情

世界の医療事情Vol.12~変異ウイルスが蔓延する状況~

現在、新型コロナウイルスの主流となっているのは、イギリス・南アフリカ・ブラジル・インド由来の変異ウイルスですが、最近ではフィリピンやカリフォルニア由来の変異ウイルスも発見されています。変異ウイルスは従来のウイルスに比べて感染力が強く、重症化や入院・死亡のリスクが高いものがあるのが特徴です。ウイルスは突然変異を繰り返すため、ワクチンの効果を弱める可能性もあり、まさに「人類の歴史はウイルスとの戦いの歴史」といえます。また、中国やロシア、インドによるワクチン外交も展開されており、世界の分断が懸念されています。

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変異ウイルスが最初に問題となったイギリス。当初はイギリス由来の「アルファ株」が主流でしたが、インド由来の「デルタ株」が急速に拡大。

デルタ株はアルファ株よりも感染力が40%高いとされており、現在、イギリスでは新規感染の7割以上がデルタ株となっています。そのためロックダウンの完全解除には慎重で、7月末までに成人全員に2回のワクチン接種を終えることが目標となっています。

政府はアストラゼネカ社のワクチン開発のために、135億ポンド(約2兆480億円)をかけたとされていますが、40歳未満には血栓症との関連性を懸念して、アストラゼネカ社以外のワクチンを使用する方針です。

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アメリカでは、変異ウイルス4種類が検出されています。ミシガン州では半数がワクチンを接種済みでしたが、未接種の若者らが自粛疲れから警戒を緩め、「アルファ株」に感染。その結果、若い重症患者が増えています。

アメリカでは秋までには集団免疫を実現できるといわれていましたが、世論調査によるとワクチン接種をためらう人が37%を占めており、接種ペースがダウン。

政府はビールや保育の無料提供、接種会場であるドラッグストアの営業時間延長などの策を打ち出していますが、夏の休暇シーズンには人々の大移動が予想され、冬までに集団免疫ができる可能性は低いとみられています。

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海外渡航者の隔離措置と追跡調査を中心とした対策で、コロナの抑え込みに成功していた台湾。4月に入り、国際線パイロットによって「アルファ株」が持ち込まれ、14日間の隔離期間を3日間に短縮したことから市中に感染が拡大。

接待を伴う飲食店やゲームセンターでクラスターが起こり、5月に入り1ヶ月足らずで感染者が1万人に急増しました。6月現在、学校はオンライン授業になり、自主的なロックダウンが行われています。

中国からの妨害によってワクチン調達が難航していましたが、6月上旬、日本が接種を見合わせていたアストラゼネカ社のワクチン124万回分を無償提供し、感謝の声が上がっています。

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インドでは、感染しやすく入院リスクも高い変異ウイルス「デルタ株」が拡大。6月15日現在、感染者は2963万人、死者は37万人を超えていますが、人口が10億人を超えるため、実際はその数倍はいるとみられます。

インドはワクチンを自国で製造し、輸出もしていましたが、自治体が独自に調達するようになりワクチン代が高騰。病院ではベッドや救急車の数が足りず、ワクチンが盗まれたり、医薬品や医療用酸素が高値で闇取引されるなど状況は逼迫しています。

自宅で亡くなり、火葬できずにガンジス河に流される死体も多く、貧困や信仰の問題が浮彫りとなっています。