ニュースレター Vol.119
世界の医療事情
世界の医療事情Vol.10~医療機関における第3波の状況~
日本でも新型コロナウイルスは、11月以降、感染拡大のペースが速くなっており、現在は 第3波の到来といわれています。冬は気温とともに湿度も下が り、人々が閉鎖された空間に引きこもって換気も不十分になることから、世界でも同様に感染者数が急増しており、インフルエンザとの同時流行も危惧され ています。その一方で、ロシア、イギリス、アメリカなどでは、ワクチンの供給 がいち早くスタートしつつあります。今後、ワクチンや治療薬が普及するま で、医療崩壊を起こさずに耐えられるかが、各国共通の課題となるでしょう。
アメリカでは、11月末の感謝祭シーズンに人の移動が増えるとともに、感染者数が1000万人を突破しました。なかでもマスクの着用率が低い中西部の感染者数が多く、医療スタッ フの超過勤務が深刻化。ICUの空きもなく、収容能力が限界に達しています。また、国家備蓄として人工呼吸器14万台が 調達されましたが、その半数が簡易型で、重症患者向けの呼吸器ではなかったことが明らかになりました。
遠隔診療の利 用は一気に拡大しましたが、新型コロナウイルス感染症以外の疾患に対応できない状況が続き、選択的手術や緊急を要し ない手術は一時的に中止する病院が増えています。
国民や社会が長期間耐えられることを目標に、厳格な都市封鎖を行わなかったスウェーデン。マスクの着用も推奨しておらず、 医療関係者ですら着用率は低いそうです。公立病院が多く、 新規感染者の増減に合わせて政府主導で病床をフレキシブルに増減させ、治療病院を集約。
ICUを希望した医療スタッ フには220%の給与がインセンティブとして保証され、医学 部の学生や一時解雇されたキャビンアテンダントも医療支援 にあたっています。一方、体調が悪くても生活のために介護 施設で働き続ける移民のパートタイマーが多く、介護施設で のクラスター多発につながったと問題視されています。
南半球のオーストラリアでは、6~8月が冬にあたるため、北半球よりも一足先にコロナ禍の冬を迎えました。メルボルンでは海外からの帰国者を隔離していたホテルの管理がずさんだったことから警備員や従業員に感染し、クラスターが発生。7月から10月にかけて厳格なロックダウンが行われた結 果、現在ではほぼ終息しましたが、失業や家庭内暴力が原因で、精神疾患が急増したという報告もあります。
国民の多くが ステイホーム、ソーシャルディスタンス、手洗いを守り、インフルエンザの予防接種率も高かったため、例年とは異なり、イン フルエンザは記録的な少なさだったそうです。
貧困の問題と感染対策が結びついているインドでは、手洗い やマスク着用など予防の知識が浸透しておらず、コロナの感染者数は現在、世界第二位です。都市部では野焼きや工業排煙 で冬の大気汚染がひどいため、マスクをしないと肺に炎症を引き起こすことが懸念されています。
農村部では医師が足 りず、ボランティアに近い公認ヘルスワーカーが活躍。PCR検 査所も増えてはいますが、人手も病床もまだまだ不足してい るため、医療体制を整える緊急支援として日本政府は500億 円の円借款を供与しました。感染症専門の病院を全県に作り、遠隔問診システムの導入なども予定されています。